中国では全人代が5日から開幕、景気減速とこの国が抱える重大なリスクについて

おはようございます !


3月の大きなテーマは米中貿易協議と、英国のEU離脱合意の二つですが、今回は昨年後半から景気対策に大きく舵を切った中国について探ってみました。


3月5日から中国では「全人代」が開催されます。
会期は10日間程度とみられ、米中貿易戦争への対応や国内経済の活性化などが焦点となります。


第12期全人代の議員数は2,987人。
各省・自治区・直轄市・特別行政区の代表および軍の代表から構成されており、代表の約70%が共産党員であります。


2019年の中国の経済成長率目標は現行の「6.5%前後」から2年ぶりに引き下げる見通しで、経済の下押し圧力に対応するため減税など大規模な景気対策が打ち出される予定です。


18年の国内総生産(GDP)の実質成長率は6.6%と目標の「6.5%前後」を上回りましたが、ただ秋からの急減速で18年10~12月期の成長率は6.4%まで落ちています。


19年前半も減速傾向が続く公算が大きいため、大規模な減税・手数料下げを軸とした景気対策や、公共投資の積み増しが予定されています。


今回の対策の柱のひとつが大規模減税です。


1月から所得税と中小企業向け減税を始めたほか「増値税(付加価値税)や社会保険料の軽減も検討する」手数料軽減を含めると18年(1.3兆元)を上回り、減税規模は1.5兆元前後とみられます。


財政赤字のGDPに対する比率も18年(2.6%)から引き上げる方向です。


また、公共投資についても景気対策の柱として、地方政府がインフラ建設にあてる債券の発行枠を18年の1.35兆元から6割ほど増やす方向で調整しています。


主役は鉄道投資。中国鉄路総公司の投資額は19年に8500億元規模と過去最高の見込みです。


 

また、金融支援もテコ入れするとしています。


人民銀は今後、地方銀行などの債券発行も支援し、資金繰りが苦しい中小企業への融資を促すようにするそうです。


18年以降、預金準備率を計4回、3.5ポイントも下げ、市中銀行の手元資金を厚くしてきました。
それでも自己資本比率の低下を懸念する銀行が中小向け融資に慎重なままなので、資本増強の支援に乗りだし、株価対策で人民銀が上場投資信託(ETF)を購入するとの観測すらでています。


中国の債務の対GDP比は07年の144%から18年は253%まで急上昇しました。


2018年は、リーマンショック以降に積みあがった過剰債務の解消を進めてきましたが、米中貿易摩擦や国内景気の減速のため、2018年後半より景気対策や減税等に舵を切り始めました。


いま世界では、リーマンショック以降、主要国・地域の大胆な金融緩和や財政出動で世界経済は崖っぷちから回復し、長らく拡大局面を続けてきました。
しかし、緩和マネーが流入した新興国で債務が膨張するなど危機対策の「副作用」も顕在化し、次の危機を誘発しかねないリスクになってきています。


中国においても、リーマン・ショック後の累次の経済対策で国有企業、地方政府、個人はいまや借金漬けになっておりますが、不動産の販売規制を緩めていないのもバブル崩壊を懸念しているからなのです。


しかし、そうはいっても「とにかく成長率が6%を割らないこと」が大前提で、19年前半に仮に6%を下回れば、対策を上積みする可能性があります。


その場合は08年のリーマン直後の「4兆元対策」の水準に近づく展開も否定できません。


現在の世界全体の債務残高は2018年3月に247兆ドル(約2京8000兆円)と、危機時の08年9月から約4割増加。
特に新興国には高い利回りを求めるマネーが押し寄せ、債務は約3倍の69兆ドルに積み上がりました。

◆中国における直近の政府債務残高と国内GDP
政府債務残高   6兆7420憶ドル(44兆3736億元)  債務残高 対GDP比 50.10%  
2009年(リーマン後)債務残高   12兆172億元 債務上昇率  364%
中国  名目GDP  13兆4572憶ドル (88兆5634億元)
名目 一人当たりGDP   8,643ドル
総人口 13億9008万人


◆米国
政府債務残高   21兆7727憶ドル     債務残高 対GDP比 105.2

2009年(リーマン後)債務残高 12兆5489憶ドル 債務上昇率 173.5%
米国 名目GDP   19兆4854憶ドル
名目 一人当たりGDP 59,792ドル

総人口 3億2589万人


日本
政府債務残高   11兆5800憶ドル(1326兆9530億円)   債務残高 対GDP比  238.23%
2009年(リーマン後)債務残高  984兆1090憶円 債務上昇率 135%
日本 名目GDP  4兆8732憶ドル
名目 一人当たりGDP 38,448ドル
総人口 1億2675万人
 ※ 数値はIMFによる2018年10月時点の推計
※ 
GFS(政府財政統計マニュアル)に基づいたデータ


ここで注意が必要なのは、上記の数値は中国政府の債務残高としてIMFに資料が出ていますが、実際の債務は、金融機関を除いた企業債務、家計債務に、政府債務を加えたのが中国の債務の全体像となります。
従って、GDPの253%、つまり34兆ドル(約224兆元)程度まで2018年末には債務残高が膨らんでいるとみられています。


これは、13年末での約120兆元の2倍近くになります。          

 


中国に関しては、右上のグラフの政府債務の数値がIMFのデータになっています。


債務の内訳としては企業債務の割合が約6割強と、他の新興国の半分以下と比べて高くなっています。
中国には多くの国有企業があり、こうした国有企業は銀行借り入れや社債の発行など資金調達で有利な立場にあるために国内の資金が企業に集中しやすいことが企業債務の割合が高い要因になっています。


その他にも、政府債務や家計債務も増加しているため金融不安の火種はますます大きくなっています。


いづれにしても、中国の債務総額は米国と日本のそれを合わせた規模に匹敵するという認識を持っておく必要はあると思います。


間違いなく、この次の暴落は中国の過剰債務が引き金になることは間違いないと思いますよ。


最後にブログ書くようになって、「リスク」ということを今まで以上に考えるようになりました。


「リスク」という言葉の本源的な意味は「将来のいずれかの時において何か悪い 事象が起こる可能性」というのが正しい解釈です。


市場が好調な時にあっても、常に「リスク」を意識することが「火傷」を避ける最善の方法であるということを念頭に置く必要があります。


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